問題概要

問題文はこちらを参照してください。

期待値の線形性を使うと簡単な問題です。

解法

1個のサイコロで考えると、問題文中にあるように期待値の定義$\displaystyle \mathrm{E}[X]=\sum_{x}x\cdot \Pr\{X=x\}$を使って計算できます。

求める期待値の確率変数を定義します。

$X$:1個のサイコロを振って出る目

$X$の確率分布を表で表します。

出る目の数$X$ 1 2 3 4 5 6 合計
確率 $\frac{1}{6}$ $\frac{1}{6}$ $\frac{1}{6}$ $\frac{1}{6}$ $\frac{1}{6}$ $\frac{1}{6}$ 1

したがって、1個のサイコロを振って出る目の期待値は $$\mathrm{E}[X_i]=1\cdot \frac{1}{6}+2\cdot \frac{1}{6}+3\cdot \frac{1}{6}+4\cdot \frac{1}{6}+5\cdot \frac{1}{6}+6\cdot \frac{1}{6}=\frac{21}{6}=3.5$$ となります。

次に、この問題で求める期待値の確率変数を定義します。

$Y$:n個のサイコロを振って出る目の合計

ここで、

$X_i$:i番目のサイコロの出る目

と定義すると、確率変数$Y$は$X_i$の和で表すことができます。 $$Y=X_1+X_2+...+X_n$$

このように求めたい期待値の確率変数を、別の確率変数の和で表すということを考えると、期待値の線形性を用いることができます。求めたい$Y$の期待値$\mathrm{E}[Y]$は下記のようになります。 $$\mathrm{E}[Y]=\mathrm{E}[X_1+X_2+...+X_n]=\mathrm{E}[X_1]+\mathrm{E}[X_2]+...+\mathrm{E}[X_n]$$ $\mathrm{E}[X_i]$は上記で求めた「1個のサイコロを振って出る目の期待値」と何ら変わりはないので、$\mathrm{E}[Y]=n\cdot \mathrm{E}[X]=n\cdot 3.5$となります。

考察

期待値の線形性を知ったときは目からうろこで、とても感激しました。ただ、これは高校時代に数学で習ったはずのことで、完全に忘れてしまっていたようです。。。

ちなみにこの問題を期待値の定義を使って解こうとすると下記のような感じになるのでしょうか。

$Y$:n個のサイコロを振って出る目の合計

これの確率分布を表で表すと

出る目の合計$Y$ n n+1 n+2 ... 6n-1 6n 合計
確率 $\frac{1}{6^n}$ $\frac{n}{6^n}$ $\frac{???}{6^n}$ ... $\frac{n}{6^n}$ $\frac{1}{6^n}$ 1

のようになります。この確率を求める公式もあるようですが、理解できませんでした。nが小さければ、全探索で計算することもできるようです。でも、期待値の線形性を知っていれば簡単という典型問題です。